NISAにはデメリットしかないって本当?特徴や新NISAとの違いを解説
少額投資非課税制度、通称「NISA(ニーサ)」は、名称からわかる通り「少額からの投資が可能」「ある金額までは非課税の扱い」などのメリットがある投資方法です。
メリットのあるNISAですが、一方ではデメリットが多いという意見がネット上で多々みられます。果たして、NISAは本当にデメリットが多く利益を出すのが難しい投資方法なのでしょうか。
今回はNISAについて、以下のポイントを解説していきます。
- NISAとは
- 2024年からの新NISA制度がスタート
- NISAがデメリットしかないと言われる理由
- NISAを利用するメリット
- NISAを利用する際に気を付けておきたいこと
NISAとは
NISAとは専用の口座を開設して、国内外の株式・投資信託などによって収益・配当を得る投資方法です。
NISA専用口座は別名・非課税口座とも呼ばれています。通常投資で発生した利益・配当は、約20%の税金がかかりますが、NISA専用口座で受け取る投資利益・配当は、課税の対象外です。
NISAの専用口座さえ所有していれば、年間120万円までの投資額が非課税となります。非課税期間は最長5年なので、最大総額120万円×5=600万円までの投資額が非課税の扱いとなります。
NISAは他にも種類があるため、区別をつけるために一般NISAとも呼ばれています。
NISAの種類は以下の通りです。
- NISA(一般NISA)
- つみたてNISA
- ジュニアNISA(0〜19歳の未成年を対象としたNISA。2023年で終了)
つみたてNISAについては、以下で説明しましょう。
NISAとつみたてNISAの違いを比較
NISAにはもう一種類、一般NISAとは異なるタイプの「つみたてNISA」があります。つみたてNISAは、一般NISAとどのような違いがあるのか、以下の表にまとめてみました。
NISA(一般NISA) | つみたてNISA | |
非課税投資額(年間) | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年 | 20年 |
投資対象商品 | 国内・海外株式 投資信託 |
金融庁が認めた投資信託 |
つみたてNISAは、投資の経験がないので不安という人を対象とした投資方法です。
つみたてNISAは「長期・積立・分散」に適した投資商品を扱っています。手数料が安い・分配金の現金化が簡単などの特徴があるため、資金に余裕のない若い世代・投資初心者でも気軽に始められます。
ただし一般NISAより大きな利益が見込めないので、一般とつみたてどちらが自分に適しているのか、事前によく考慮しましょう。
2024年からの新NISA制度がスタート
元々NISAは2023年までの期間限定の投資制度でした。しかし税制改正により従来のNISAは、2024年から「新NISA」としてスタートします。
新NISAになってからの変更部分は、以下の通りです。
非課税投資額(年間)
◆成長投資(旧・一般NISA)枠:240万円 非課税期間 ◆成長投資(旧・一般NISA)枠:無期限 成長投資とつみたて投資の併用 ◆以前は不可能、改正後は可能 |
非課税投資額の枠が拡大・非課税期間が無期限という変更点があります。また併用も可能なので、年間で最大360万円の投資を非課税対象にすることが可能です。
今のNISAから新NISAへのロールオーバーはできない
新NISAがスタートした際、現行のNISAで保有している商品は、一般・つみたて共にロールオーバー(乗り換え)することはできません。
ただし新NISAがスタートしても、現行のNISAは購入時から非課税の対象となります。購入してから一般は5年間、つみたては20年間、非課税として所有可能です。
非課税期間が終了後、旧NISAを新NISAに移行することはできないため、新NISAを始めたい場合は新たに手続きをしなくてはいけません。
NISAがデメリットしかないと言われる理由
NISAに関して調べていくと出てくるのが、否定的な意見です。中には「デメリットしかない」「やめとけ」という辛口な意見も見かけます。
なぜNISAはデメリットが多いと言われているのでしょうか。
元本保証がない
NISAとはあくまで少額投資非課税制度という、投資額の一定額・一定期間まで税金がかからない制度です。非課税であることは保証されていますが、投資の元本割れが起きないという保証は一切ありません。
NISA経由で株式投資をした場合、株の発行元の企業が業績不振・倒産などをすると、価値が下落して元本割れが発生します。
NISAは他の投資方法と異なり、少額からの投資が可能であるため、元本割れをしてもそれほどの損害にはなりません。しかし元本割保証がないため、NISAを避けている人も少なからずいます。
元本割れしないように、投資先の企業の動向・投資に関する情報収集を怠らないことが大切です。
損益通算・繰越控除を利用できない
NISAは、他の投資方法では可能な「損益通算」「繰越控除」の適用ができないのが、デメリットです。
損益通算とは、投資先の口座を複数用意して損失額・税金を減少させる計算方式です。投資の一方の口座で50万円の損失・もう一方の口座で25万円の利益が出た場合、50万円−25万円で、25万円の損失となります。
この方式で損失を分散して、トータルの損失が0円になれば税金は発生しません。また、損失は来年に持ち越して繰越控除をすることもできます。
繰越控除とは、最大3年間、損失分を翌年にまわすことが可能な控除方法です。ただし繰越控除には税金がかかります。
NISAは、損益通算・繰越控除のどちらもできないため、損失分にかかる税金が発生して、それを支払わないといけません。
1人1口座までしか開設できない
NISAの専用口座は、1人につき1つの口座しか開設できない仕組みのため、1人で複数のNISA口座を持つことはできません。
NISA口座の金融機関は年に1回変更することが可能です。各金融機関の手数料などを比較して、どこの金融機関が最も自分に適しているのか、よく考える必要があります。
スイッチングでも非課税枠が消費される
スッチングとは保有している投資商品を売却して、それで得た資金を使って別の商品に買い替えることです。
より条件の良い商品に変更できるメリットのあるスイッチングですが、デメリットもあります。それはスイッチングのために売却をすると、その商品の非課税枠が消えてしまう点です。
スイッチングをしたことにより非課税枠が消費されて0になってしまうと、追加などができなくなり、ただ新しい商品の保有のみとなります。
海外居住者は利用できない
NISAの口座を開設するためには「日本国内に住んでいること」が、条件の一つとして挙げられています。そのため、口座開設後に海外転勤などで国外へ移住する場合、NISA利用はできないので、口座解約・残高全額払い出しをしないといけません。
ただし、一定の条件を満たして手続きを行なえば、口座を解約せずに凍結して維持することが可能な場合もあります。この間は取引・出金はできません。
非課税保有期間終了後に課税される可能性がある
NISA口座の非課税保有は期間が決まっているので、一般NISAだと5年・つみたては20年経過すると、非課税保有期間は終了して、課税口座への移動になります。
この際に注意しないといけないのは、終了時に元本割れをしていた場合、差額分も課税対象となってしまうことです。
非課税保有期間が終了する前に売却をするなどして、対処をしないといけません。
NISAを利用するメリット
ネット上で見かける「NISA やめとけ」というワードから、ネガティブなイメージを持っている人も少なくないNISAですが、それだけ知名度があり注目している人・利用している人が多い証拠といえます。
ではNISAを実際に利用するとどのようなメリットがあるか紹介します。
少額から投資を始められる
NISAの魅力は少額からの投資が可能であるため、投資の初心者でも気軽に始められる点です。
他の投資だと、初期費用・運営費用など高額の資金を用意する必要があります。このタイプの投資方法は、うまくいけばハイリターンになりますが、その分ハイリスクでもあるため、大きな損害を受ける可能性もあるでしょう。
それに対して、正式名称が「少額投資非課税制度」であるNISAは、大金を用意しなくても少額で投資開始ができます。
投資というと「ギャンブルみたいで失敗すると大きな借金になるのでは」というイメージを抱いている人も未だに少なくありません。
そのような人でも、気軽に投資にチャレンジできるのが、NISAの人気ポイントです。
5年間非課税枠を利用できる
NISAの正式名称「少額非課税制度」でわかる通り、NISAの売りは、先述した少額投資が可能な点、そしてNISAへの投資で得た収益はすべて非課税になる点です。
投資で発生した配当金や分配金、譲渡益などは、最長5年間は非課税の対象になります。他の投資であれば、投資で得た利益には20%の税金(所得税15%+住民税5%)がかかる仕組みです。
しかしNISAなら税金を支払う必要がなく、利益をそのまま自分の資産にできます。
確定申告が原則不要
NISAの専用口座を利用して生じた投資利益は、先述した通り非課税の対象になります。そのため、NISAで生じた利益は確定申告をしなくても問題ありません。
普段、企業の正社員として働いている人は、毎月給料から所得税が引かれており、年末に会社が調整を行なってくれるため、確定申告をしなくてもよい仕組みです。
そのため、NISAで利益が出た人は「この利益を確定申告で報告しないと税務署から注意が来るのでは?」と思っている人もいるでしょう。しかし、NISAで生じた利益は非課税なので、確定申告は不要です。
分散投資がしやすい
NISAは一つの銘柄にだけに投資するのではなく、代行人のファンドマネージャーが、複数の銘柄に投資をするやり方です。
投資先が複数であれば、リスクも分散することが可能です。銘柄の価格下落が起きた場合、その銘柄だけに投資をしていれば、そのダメージがダイレクトに投資家にきます。
しかし、複数の銘柄に投資していれば、一方の銘柄が暴落しても、もう一方の銘柄の利益でカバーするといった方法が可能です。
銘柄の価格下落があっても分散させてダメージ軽減というやり方が可能なのが、NISAのメリットといえます。
換金しやすい
NISAは現金化を迅速にできる点もメリットです。他の投資方法は、手数料が高く気軽にできない・ある年齢に達するまで引き出し不可能といったものがあります。
しかし、NISAは手数料も安い銘柄が多く、引き出し・現金化の制限やペナルティも一切ありません。他の投資にはない換金性がNISAの魅力です。
NISAを始める時に気をつけるべきポイント
NISAは少額からの投資が可能で非課税なので、投資初心者でも気軽にできる特徴がありますが、投資をすれば必ず利益が出る保証はありません。
NISA利用で失敗しないためにも、事前にいくつかのポイントを押さえておきましょう。ではNISA利用で気をつけるポイントとは何か、次より説明します。
投資する金額をあらかじめ計算しておく
NISAを利用する場合、投資に回せる金額はどれくらい用意できるのか、その投資額によってどれほどの利益が出ると予想できるか、事前に計算をしておきましょう。
投資額・投資年数・金利を設定して、シミュレーションを行なえば、数年後の利益を把握できます。
一般・つみたて共に、非課税投資額・非課税期間を考慮した上で、数年先の計算をするようにしましょう。
投資に関する勉強をする
NISAは少額投資・非課税が売りなので、高額の投資額が必要な他の投資方法に比べると、リスクが少ない投資方法です。そのため、価格下落などにより大きな損害が出ることはほとんどないため、NISAは初心者向けといわれていますが、何一つ投資に関する知識がない状態だと、少額とはいえ元本割れをする可能性もあります。
NISAは専門家が代行をしてくれる投資信託ですが、円滑な投資が実践できるように、投資に関する学習もしておいたほうがいいでしょう。投資の学習方法には、書籍の講読・セミナー受講などがあります。
長期的な運用を心がける
NISAの魅力は、現金化が簡単という点です。すぐに換金できて現金が入手できるのは便利ですが、すぐに現金化してしまうと、利益が出ません。しっかりとした利益が欲しい場合は、短期間ですぐに換金するのではなく、長期的な運用を心がけましょう。
NISAの強みは、一定の金額・期間は非課税なので、長期的な運用をしても税金が一切かかりません。非課税期間がいつまでなのか確認して、1年目・2年目と利益をシミュレーションして、運用を進めていくことが大事です。
ドルコスト平均法を用いてリスクを軽減する
NISA利用でリスクを回避・軽減するためには、ドルコスト平均法の導入がおすすめです。ドルコスト平均法とは、特定の商品に対して一定の金額を定期的に購入する方式を指します。
商品を選ぶ手間がかからない・手数料無料・価格変動の影響がないなど多数のメリットがあるので、投資初心者におすすめです。
ただし、長期的に購入することによって利益が出る方法なので、短期ですぐに現金化をしたい人には向いていません。
分からないことは専門家に相談する
NISAは投資信託なので、自分で運用をする必要はありませんが、それでもNISA・投資に関してわからないことがあったら、専門家に相談をしましょう。
NISA・投資に関する相談窓口が用意されているのは、以下のところです。
- 銀行
- 証券会社
- IFA(フィナンシャルアドバイザー)
どの窓口にも投資に関する知識・スキル・実績が豊富なプロフェッショナルが常駐しているため、適切なアドバイスを受けることが可能です。
NISAに関するFAQ
NISAに関して、よく挙がる疑問を以下にまとめてみました。NISAに関する代表的な5つの疑問とその回答を、以下より紹介しましょう。
NISAの利用が向いている人は?
NISAの利用が向いている人は、以下のようなタイプです。
- 収入の中から投資に回せるお金が若干でもある人
- 投資信託の際、自分で銘柄を選びたい人
- タイミングをみて投資をしたい人(一括購入も可能のため)
NISA以上に長期で運用をしたい人、少額の投資で積み立てをしたい人は、NISA以上に非課税期間のあるつみたてNISAがおすすめです。
NISAの口座変更にデメリットはある?
NISAの口座は1人1口座のみ開設でき、口座は1年に1回、変更可能です。NISAの口座を変更した場合、変更前に保有していた商品を、変更後の口座へ移行することはできません。変更前の商品は売却するといった対処をしなくてはいけません。
売却をせずにそのまま口座にて商品を管理する場合、課税口座となるので商品には税金が発生します。
また、非課税期間が終了した際、翌年の非課税投資枠に商品を移行する「ロールオーバー」も、口座変更をした場合にはできません。
ジュニアNISAにデメリットはある?
ジュニアNISAは、0〜17歳の未成年が対象で、未成年でも投資ができるのがメリットです。ただし18歳になるまで引き出しが不可能、引き出しをする場合は課税対象になります。
また、一般NISA・つみたてNISAと同じく元本保証がないのもデメリットです。未成年向けの少額投資であっても、元本割れする可能性があります。
ジュニアNISAは、2023年いっぱいで制度終了です。未成年でも投資をしたいという人もできなくなります。
NISAからつみたてNISAに切り替えできる?
NISA・つみたてNISAは、年に1回だけ切り替えが可能です。手順は以下になります。
同じ金融機関で切り替えをする場合
- 金融機関から非課税口座異動届出書をもらう
- 届出書と本人確認書類を同封して提出
- 完了通知がくれば切り替え完了
違う金融機関で切り替えをする場合
- 金融機関から金融商品取引業者等変更届出書をもらう
- 届出書と身分証明証を提出
- 口座開設の申し込み
- 発行された非課税口座開設届出書に必要事項を記入して、変更前の金融機関からもらう非課税管理勘定廃止通知書と一緒に提出
NISAをするのにおすすめのネット証券は?
おすすめのネット証券は、以下の3つです。
SBI証券
口座開設数1,000以上を誇るのが、SBI証券です。国内株・外国株・IPOやミニ株など、豊富な商品が用意されています。
楽天証券
IT企業の大手として業界を牽引している楽天グループは、証券も取り扱っています。一般NISAに関しては、2,500以上ものさまざまな商品を揃えているのが特徴です。
楽天カードを使用しての投資も可能なので、投資をしながらポイントも貯まります。
マネックス証券
大手証券会社であるマネックス証券は、米国株の取引に強い証券会社として有名です。マネックスカードとも連動しているので、カードのポイントも貯まります。
まとめ
少額投資非課税制度という名称である「NISA(ニーサ)」は、文字通り少ない金額からの投資が可能です。「投資ってたくさんのお金が必要なのでは…」というイメージのため、投資に手が出なかった人でも、気軽に開始できる特徴があります。
それに加えて、他の投資にはない非課税という点も魅力ですが、デメリットも多いという意見も少なくありません。そのためNISAを始めてみたいけれど、損をするんじゃないのか、という考えの人もいるでしょう。
NISAを始めようか迷っている人がやるべきことは、NISAの仕組み・構造を理解すること、そして、メリットとデメリットの両方をしっかりと把握することです。
良い点・悪い点の両方を理解したうえで「本当に自分に向いている投資なのか」が見えてくるでしょう。
NISAの情報をしっかりと頭に入れて、円滑な投資を行ないましょう。
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