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不動産投資は節税にならない?仕組みや節税効果を高くする方法を解説

2024.02.05

株式など数ある投資方法の中の一つである不動産投資は、老後の資産形成、安定した副業収入など、あらゆる目的がありますが、中には節税のために投資を始めようと検討している人もいると思います。

しかし、不動産投資は節税になるという意見がある反面、ネット上でよく見かけるのが「節税は嘘」「節税にならない」というワードです。

果たして、不動産投資は、本当に節税にならないのでしょうか。今回は、不動産投資における節税について、次のポイントを解説しています。

  • 不動産投資は節税になる仕組み
  • 不動産投資で受けられる節税の種類
  • 不動産投資の節税効果が高い人の特徴
  • 不動産投資の節税効果シミュレーション方法
  • 不動産投資で節税する際に注意すること

不動産投資が節税になる仕組み

結論からいうと不動産投資を通しての節税は可能です。では、不動産投資における節税はどのような仕組みになっているのか、以下より説明しましょう。

給与所得との損益通算ができる

不動産投資は、投資以外の本業の給与所得によって損益通算ができるため、節税が可能です。損益通算とは、不動産投資で生じた損失を投資以外の黒字所得によって相殺して、損失を減らすことを指します。

それにより、本業の所得が減りますが、その分、所得にかかる所得税が低くなるので、給与から源泉徴収で引かれていた所得税が還付される仕組みです。

ただし、損益通算によって所得税還付を実践するには、確定申告をしなければいけません。また、不動産ローンによって支払った利息によって生じた赤字は、損益通算には含まれない決まりです。

また、不動産投資において経費として認められる出費は、減価償却費も含まれます。それにより経費として計上できる金額が増えて、節税が可能です。

減価償却とは

減価償却とは、耐用年数を分割して経費として計上できる仕組みのことです。不動産の建物を購入した金額を、建物の耐用年数で分割して経費扱いにして計上できます。

通常の必要経費に加えて減価償却​​によって経費を多く計上できるので、所得を少なく申告することが可能です。それにより耐用年数の期間中は、所得税・住民税を節税できます。

不動産投資で受けられる節税の種類

不動産投資は、個人・法人によって節税の種類が異なります。不動産投資の節税の種類を紹介していきます。

不動産投資は個人で行うと節税効果が高い

不動産投資は、法人よりも個人の方が節税に関しては効果が高いです。不動産投資において個人でできる節税の対象になるのは、次の税金になります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 贈与税

上記の税金が不動産投資によって節税となる仕組みは以下の通りです。

所得税・住民税が節税になる仕組み

所得税・住民税はどちらも所得に課せられる税金です。これらの課税金額は、所得金額が増えればそれに比例して税率も高くなる累進課税制度を​に沿って決められます。

不動産投資は、先に説明した損益通算・減価償却によって課税対象である本業の給与所得を減らすことが可能です。所得額が低くなれば税率も低くなるので、所得税・住民税の課税額を減額できます。

相続税・贈与税が節税になる仕組み

相続税・贈与税の定義は以下になります。

・相続税

故人の資産(不動産の場合は土地や建物)を相続した際、その資産に課せられる税金

・贈与税

他社が所有する資産を無償でもらった際、その資産にかかる税金

相続税・贈与税は、国税庁が決めた「相続税評価額」によって計算をします。評価額で出された不動産の価値は、時価よりも20〜30%安くなる仕組みです。

相続・贈与をする場合、不動産売却によって現金化して受け取るパターンもありますが、売却するよりもそのままの状態で相続・贈与を済ませたほうが節税につながります。

法人の場合は大規模投資で法人税が節税になる

法人における不動産投資の最大のメリットは、法人税の節税ができる点です。個人の場合は先述した通り、所得の大小に比例してそれにかかる所得税・住民税の税率も上下します。法人の場合、個人の所得税・住民税に対応するのが、法人税です。

法人税は、法人としての所得に課せられる税金で、所得が多いほど税率も上がります。この税率というものは、最大値が設定されている仕組みで、最大税率はそれぞれ以下になります。

  • 所得税、住民税:最大税率55%
  • 法人税:最大税率33%

このように、法人税の方が税率が低い仕組みになっているので、所得が多い人は法人化をした方が節税の効果が高いです。

また、法人の利益で大規模な不動産投資を行なえば、法人の所得と相殺することによって法人税を節税できます。

不動産投資の節税効果が高い人の特徴

不動産投資は必ず節税につながるとは限らず、投資を行なっている人のタイプによって節税効果がある人・ない人に分けられます。

では、不動産投資の節税効果がある人の特徴を説明していきます。

収入が多い人

不動産投資の節税に向いている人は収入が多い人、具体的にいうと課税所得900万円以上の人です。課税所得が900万円を超えると、所得税率が税率が33%以上となり、譲渡所得税率との差が広がります。

譲渡税率とは、不動産を売却して得た利益にかかる税率です。不動産売却の利益も所得税・住民税の対象となり、売却によって発生する税金は一般的に不動産譲渡税・譲渡所得税と呼ばれています。

不動産購入から5年以降に売却した場合、売却で得た利益にかかる譲渡所得税の税率は20%です。900万円以上の課税所得だと税率33%−20%=13%もの差が出ます。

これだけの税率の開きがあれば、100万円ほどの節税が実現可能です。年収が大きいとさらに税率に差が生まれるので、より節税が達成できます。

その逆で、課税所得が900万円以下の場合、譲渡税率20%との大きな差が生まれないので、節税効果はありません。

青色申告を行うことができる人

課税所得が900万円以下であっても、青色申告が可能な人であれば節税できます。

青色申告による特別控除は、事業所得・不動産所得・山林所得の3種類の取得が控除対象となっており、不動産投資で得取得も対象に含まれています。

青色申告をすれば、以下のような特別控除を受けられます。

  • 簡易簿記での申告:10万円
  • 複式簿記での申告:55万円

上記のように、合計65万円の特別控除が可能です。青色申告は、以下の手順で行ないます。

  1. 複式簿記で経費を記帳
  2. 確定申告の期間中に、必要書類(申告書、貸借対照表、損益計算書​​など)を税務署に提出
  3. e-Tax経由で申告

1、2は、55万円控除、3は10万円控除の手続きになります。

不動産投資を継続して行う予定がある人

不動産投資を一つだけにこだわらず、複数の不動産に投資をして継続を考えている人は、節税が向いています。

不動産投資を数年にわたって続けていると気になるのが、減価償却です。減価償却に該当する期間(耐用年数)が終了すれば経費計上ができる期間も終了するので、この時点で不動産投資を止める人も少なくありません。

あるいは耐用経年が数十年の場合、長年の不動産管理が負担に感じる・あるいは途中で他の投資方法に移行するなどして、不動産投資を止めるパターンもあります。

しかし、不動産投資が自分に合っているため継続を希望する人は、所有する不動産を変更するなどをして節税も続けるでしょう。

中古物件を中心として不動産投資を行う人

新築物件にこだわらずに中古物件を中心として不動産投資をする人は、節税に向いています。新築物件は耐用年数が長いために、1年間の減価償却費用として計上できる金額は少なめです。

しかし中古であれば耐用年数も短いので、その分減価償却として認められる費用は高めになり、節税効果が高くなります。

不動産投資の節税効果シミュレーション方法

投資

不動産投資は、数ある投資方法の中でも中〜長期的な運用をする投資です。そのため、事前に「どれくらいの利益が期待できるのか」「どれぐらいの節税効果が見込めるのか」といったことを、しっかりとシミュレーションしておくことが大事です。

事前にシミュレーションをして予想しておけば、損失の回避・対処法を用意できます。では、不動産投資における節税効果のシミュレーション方法を説明していきます。

①経費計上できる金額を計算

経費として計上できる主なものは、以下の項目です。

  • 管理費(不動産の点検・清掃)
  • 修繕費用
  • 管理代行会社に支払う手数料
  • リフォーム費用
  • 各種保険(火災・地震保険)
  • 各種税金(固定資産税・都市計画税・不動産取得税)
  • 利息
  • 減価償却費
  • 管理に関して必要だった移動の交通費
  • 不動産関連の書籍代

そして、以下は経費として認められていないので、把握しておきましょう。

  • 自分が住む不動産の修繕・リフォーム、保険、その他私生活に関する費用
  • ローン返済の元本

かかる費用は所有する不動産の規模・耐用年数などによって異なります。

②不動産収入を計算

不動産収入とは、投資によって生まれた利益を指します。例えば、管理する物件を賃貸で貸し出した場合、家賃⚪︎万円で部屋数が⚪︎部屋だった場合、月にどれぐらいの収入になるのか、といった具合に計算しましょう。

入居者が必ずいて全部屋埋まるとは限らないので、その点も考慮して計算することが大事です。

③不動産所得を計算

ある程度の収入が把握できたら、次にやることは損益通算​​での計算です。どれだけの税金が発生して、本業がある場合は本業の所得税から相殺できるのか、シミュレーションしましょう。

課税所得が900万円以上・以下のどちらか、それによって青色申告をするかどうかが決まるので、しっかりと課税所得を認識して計算を行なうことが大事です。

不動産投資で節税する際に注意すること

不動産投資において節税を実践する際、注意点があることも把握しておきましょう。事前に注意点を頭に入れておけば節税での失敗を回避できます。

シミュレーション通りの収支にならないこともある

不動産投資およびその節税は、事前のシミュレーション通りにいかないケースもあります。不動産の土地は、その時の景気や市場動向によって価値が上下する仕組みで、常に一定ではありません。

そのため、投資前に綿密にシミュレーションを行なって絶対に損失はしないと計画しても、思い通りに行かない・節税できないといったパターンは少なくありません。

また、賃貸物件の管理の場合、空室リスクがあります。事前に月にこれだけの収入が見込める・これだけの経費がかかるといった計算をしても、必ず入居者が絶えずいるといった保証はありません。

実際に賃貸物件の管理をやって、ほとんど入居者が見つからなく、大きな損失が出たという例も珍しくありません。

不動産投資の節税は投資そのものがうまくいって初めて効果があるものです。しかし、不動産投資は、シミュレーション通りに運ばないで節税もうまくいかないことも起こりえるのです。

短期間で譲渡すると高い税率が課せられる

不動産投資の譲渡は、運営期間が5年以上・以下によって長期譲渡・短期譲渡という分類になっています。この2つの譲渡の違いは、税率です。期間によって各種税率は以下のように変更します。

・長期譲渡

所得税15%、住民税5%、合計税率20%

・短期譲渡

所得税30%、住民税9%、合計税率39%

以上のように、長期と短期では短期の方が税率が高く、税率に19%もの差が生じています。5年以内に譲渡をすると高い税率で税金を支払わないといけません。

ただし、期間が長期になると耐用年数も経過して、価値が下がります。短期と長期、どちらがお得なのか、譲渡のタイミングを見極めることが大事です。

長期間保有すると減価償却費が計上できなくなる

不動産を長期間保有するとその分税率は下がりますが、あまりにも長期間におよぶと減価償却費が計上できなくなります。

減価償却費は、不動産の耐用年数によって決まります。しかし、保有期間が耐用年数を超えてしまうと、計上できる材料そのものがなくなってしまうので、経費として計上できません。

長期間保有して税率の低さを取るか、耐用年数の期限が切れるまでに譲渡するか、よく考えることが大事です。

不動産投資で節税をする際によくある質問

不動産投資の節税において、よく挙がる疑問を以下にまとめました。

「不動産投資は節税にならない」は嘘?

不動産投資の節税は、今回の記事で解説したような以下の仕組みを知っていないと、実践できません。

  • 損益通算
  • 減価償却
  • 課税所得と税率の関係(所得900万円以上だと譲渡所得税率に大きな差が出る)
  • 相続税・贈与税が安くなる
  • 個人より法人の方が税率が低い

不動産投資の節税はこれらの仕組みを知って、さらに確定申告をする必要があります。

また、不動産投資はあくまで投資により利益を出すことが目的なので、支払う税金を減らしたいから不動産投資を、という軽い考えで投資を行なっても、うまくいきません。

不動産投資と節税の仕組みをしっかりと理解しないと、節税効果を得られず損失が出るだけになります。

また、「不動産投資の節税は嘘」という意見を持つ人は、以下のような特徴があります。

  • 数ある投資の中でも不動産投資が向いていない人
  • 不動産の価値が下がっていた時期に投資を行なって、早々に諦めてしまった人

不動産投資は、市場動向などをみて長期的な視野・計画を持たないと、利益を得たという手応えを得られません。

節税以前に、不動産投資で利益を得られなかった人・向いていない人が、「節税は嘘」というネガティブな印象を持ち、それがネットに定着してしまったといえます。

不動産投資で節税効果が出づらい物件はある?

不動産投資で節税効果があるのは、木造築古の物件です。木造は耐用年数が短く、築古であれば耐用年数を超えていても大きな減価償却費が計上できます。

つまり節税効果が出にくい物件はその逆で、耐用年数の長い新築マンションです。また、木造・築古であっても、あまりにも老朽化が激しい場合、物件そのものの価値がないため、減価償却費が発生しない場合もあります。

不動産投資は白色申告でも節税できる?

白色申告は、確定申告の際に不動産投資で得た利益・かかった経費を申告すれば、その経費分だけ控除となります。経費を申告しないと節税にはありません。ただし、青色申告のように、帳簿などを提出する必要はありません。

本格的に不動産投資に取り組み利益も順調に出ている人、事業収入もそれなりにある人であれば、青色申告が大幅な控除ができるので得でしょう。

ただし、大きな利益・税金の発生がない場合は、手間のかかる青色申告ではなく白色でも十分といえます。

不動産投資は年収いくらになったら法人化するのがお得?

不動産投資を行なっている人で年収900万円を超えた場合、法人化した方がお得です。900万円以上になると所得税・住民税の税率が上がり、譲渡所得税率と大きな差が生まれるので、譲渡の際に節税になります。

また法人化をすれば、個人の所得税・住民税より税率の低い法人税になるので、これも節税になる仕組みです。

まとめ

不動産投資は、投資方法の種類・それぞれの投資を進める手段が複雑なのが特徴です。

そのため、軽い気持ちで「節税になるから」と不動産投資を始めた人は、予想以上に手間がかかり、辟易したというパターンも少なくありません。

そして、「不動産投資で満足できる利益が出なかった=節税もできなかった」という感想を抱き、それが「不動産投資は節税できない」「節税は嘘」というイメージに繋がったようです。

不動産投資は長い期間を費やして利益を出す投資方法なので、節税をしたかったらじっくりと腰をすえて、一つひとつの節税のポイントを順に押さえていく必要があります。

大事なポイントをしっかりと押さえて、円滑な節税を実践しましょう。

監修者コメント

先述のとおり、そもそも不動産投資の目的は投資により利益を生み出すことです。確かに、不動産投資によって減価償却・損益通算などいくつかの節税効果が生まれますが、利益が生み出せなければ損失が大きくなり、結果として不動産投資により損をしていしまします。損失を避けるためには、予め様々なシチュエーションを想定し、不動産投資のシミュレーションを行っておくことが大切です。「節税になるから」と安易に不動産投資を行うことにはリスクがありますので、ご注意ください。

藤沼 寛夫

監修:藤沼

公認会計士・税理士
アカウントエージェント株式会社 代表取締役
『公認会計士の転職日誌』『税理士の転職日誌』主筆

2014年よりEY新日本有限責任監査法人にて上場企業等の会計監査に従事。2018年より中堅会計事務所にてM&Aアドバイザリー等に従事し、2019年より独立。
現在に至るまで、会計監査・内部統制支援・IPO支援・税務アドバイザリーなど、会計税務に関する幅広いサービスを提供している。

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