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個人年金保険とは?iDeCoとの違いや受けられる控除についてわかりやすく解説

2023.09.10

個人年金保険とは、公的年金に上乗せするために民間の保険会社で加入する年金保険のことです。

個人年金保険保険は、サラリーマンであれば年末調整だけで保険料控除が受けられる、というメリットがある一方で、商品によって元本割れや為替変動リスクがある金融商品です。

個人年金保険について種類、メリットやデメリット、加入する際の注意点などを分かりやすく解説していきます。

個人年金保険とは

個人年金保険とは、老後の資金としてお金を積み立てて受け取るタイプの保険のことです。

契約後は一定年齢まで保険料を毎月払い、受取開始時期からは一定期間または終身にわたってお金が支払われます。年金形式または一括のうち、契約者が希望する形で受け取れます。

老後の資金と言うと、国民年金などの公的年金があるのではないか、と思われるかもしれませんが、「老後2000万円問題」で言われるように、これからは公的年金に加えて自助努力が必要とされてくる時代です。

どんな種類があるのか、メリットやデメリットなど、個人年金保険について正しく理解して選択しましょう。

個人年金保険の種類

個人年金保険は、以下のような方法で分類できます。

1つずつ順番に解説していきます。

運用利率による分類

運用利率とは、金融商品で元本に対する利子の割合のことを言います。

よく「運用利回り」と混同されますが、「利回り」は、利子だけでなく分配金や売買差益などその金融商品で得られる全ての収益の割合を示しますので、厳密には「運用利率」と異なります。

個人年金保険は金融商品ですので、一定の運用利率によって顧客から預かったお金を運用し、その収益を年金として還元します。

この運用利率が固定のものを「定額個人年金保険」、運用利率が変動するものを「変額個人年金保険」と言います。

定額個人年金保険

定額個人年金は、保険会社の運用成績に関係なく、将来の年金として受け取る金額が決まっているタイプの年金保険です。年金受け取り前に被保険者が死亡した場合には、一定の死亡保険金が受け取れます。

年金額が決まっていて安心な反面、インフレ時には受取額の実質価値が目減りするリスクの他、現在のような低金利時に契約すると、その後金利が上昇した際のメリットを享受できない可能性があります。

変額個人年金保険

変額個人年金は、運用次第で将来受け取れる年金額が変動します。ですから、運用が上手くいけば、多くの年金や一時金を受け取ることができますが、元本割れするリスクや年金額が予定より大きく減るリスクもあります。定額個人年金保険と同じように、年金受け取り前に被保険者が死亡した場合は、一定の死亡保険金が受け取れます。

運用方法による分類

運用方法によって個人年金を分類する方法もあります。

ここでは、円建てで運用する年金とドルやユーロなどの外貨で運用する年金の違いについて説明します。

円建て運用

円で運用する年金保険ですので、年金の給付額は為替変動の影響を受けず一定に決まっています。年金額が決まっているので収入の計画は立てやすいですが、長期的にインフレになってしまうと年金額の価値が目減りしてしまう、というリスクがあります。また、ここ数年は円の国債金利が非常に低いため、運用成果が低い傾向にあります。

外貨建て運用

ドルやユーロなど外貨で運用するタイプの年金保険です。例えばドルであれば、現在の国債金利は4〜5%あり、日本の円よりもずっと高い利率で運用できます(2023年8月現在)。

ただし、外貨で運用しますので、運用成績とは別に為替の変動リスクがあります。為替の変動リスクは場合によっては、金利や運用利率の変動よりもずっと大きくなりますので、注意が必要です。

受取期間による分類

年金の受取期間によって分類する方法もあります。

ここでは代表的な「終身年金」と「確定年金」を取り上げてみましょう。

終身年金

終身年金は、年金の受取期間が終身、つまり、被保険者が死ぬまで年金を受け取ることができます。高齢化社会が進むにつれ、「長生きするリスク」を心配する人が増えています。終身年金であれば、どんなに長生きしても、最後まで年金を受け取ることができます。

確定年金

確定年金は、10年・15年など、年金の受取期間があらかじめ定まっているタイプです。年金受取期間中に被保険者が亡くなってしまった場合には、遺族が残りの年金を受け取ることができます。

保証期間による分類

保証期間とは、被保険者の生死に関係なく年金の受取が保証される期間のことを言います。

よく年金は、「早く死んでしまうと受け取れる年金額が少ないので損をする」と言われますが、保証期間があれば、被保険者が死んでしまっても、遺族に支払った分の保険料は一定還元されます。

保証期間付終身年金

保証期間付終身年金は、終身年金なので、被保険者が生きている限り年金を受け取ることができる年金です。
支給開始時期から保証期間中は、被保険者が亡くなった場合でも、遺族が残りの保証期間分の年金を受け取ることができますが、保証期間終了後に亡くなると、その時点で年金の支給が終了します

保証期間付有期年金

保証期間付有期年金は、保証期間内であれば被保険者の生死に関係なく年金を支払うタイプの個人年金です。保証期間終了後は、契約日に決めた年金受取期間中に被保険者が生存している間は年金が受け取れます。

個人年金保険のメリット

個人年金保険のメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

個人年金保険のメリットについてまとめました。

  • 老後に受け取れる年金額が増える
  • 個人年金保険料控除が受けられる
  • 健康に不安がある人でも契約できる

老後に受け取れる年金額が増える

個人年金保険に加入していれば、老後に受け取れる年金額が増えます。

冒頭で「老後2000万円問題」に触れましたが、日本の金融庁の試算によれば、公的年金だけでは老後30年間の生活費で合計2,000万円が不足する、とされています。

しかもこれは、物価や社会保険料が現状のままだとした場合の試算であり、もしインフレにあったり社会保険料が上がったりすれば、2000万円ですら足りなくなる可能性があるのです。

今一度、自分には老後の資金が充分にあるか、足りないとすればどのくらいか、を検討してみましょう。

自分が公的年金をいくら受け取れるかは、日本年金機構が毎年発行する「ねんきん定期便」を確認するか、日本年金機構のHP「ねんきんネットHP」に登録して確認できます。

個人年金保険料控除が受けられる

個人年金保険に入ると個人年金保険料控除が受けられるというメリットがあります。

保険料控除とは、払った分の保険料を所得から一定額控除できる仕組みで、その分所得が低くなり払う税金が少なくて済みます。

保険料控除には大きく分けて「社会保険料控除」「生命保険料控除」「損害保険料控除」があり、個人年金保険料控除はこのうちの「生命保険料控除」の中に分類されます。

具体的には、個人年金保険料控除によって最大で所得税4万円、住民税2.8万円を控除することができます。つまり所得税なら、最大4万円×税率分、税金が安くて済むというわけです。

個人年金保険料控除を受けるには、該当の保険が以下の条件を満たして「税制適格特約」が付帯されている必要があります。

  • 年金受取人=被保険者
  • 年金受取人は、被保険者と同一かその配偶者
  • 保険料払込期間が10年以上
  • 年金の受取開始が60歳以上
  • 年金の受取期間が10年以上

個人年金保険料控除は、サラリーマンであれば年末調整時に保険会社からの控除証明書などの必要書類を提出するだけで、受けることができます。医療費控除などのように確定申告が別途必要になるわけではないので便利です。

健康に不安がある人でも契約できる

既往歴のある人や健康状態があまり良くない人は新たな保険に加入しにくいという悩みを抱えていますが、個人年金保険は加入できることが多いです。

健康不安を抱える人が加入できるのは、以下に挙げる個人年金の仕組みが理由です。

  • 被保険者が亡くなった場合には払込保険料に相当する死亡給付金が支給される
  • 高度障害状態になったときの保険料払込免除がない

払込保険料以上の死亡保障がないので、医師の診査などが必要ないケースが多いのです。

ただし、全ての個人年金が該当する場合ではないので、申し込む前のご確認をお願いします。

個人年金保険のデメリット

個人年金保険にはデメリットもあります。個人年金保険のデメリットにはどんなものがあるかまとめました。

  • 年金受取時に税金がかかる
  • 中途解約時に元本割れする可能性が高い
  • 解約返戻金が払った保険料よりも少なくなる可能性がある

年金受取時に税金がかかる

個人年金保険は保険料を支払う時に控除が受けられる一方で、年金受取時には雑所得として所得税・住民税の課税対象となります。(分割で年金方式で受け取った場合)

と言っても受け取る年金額にまるまる課税されるというわけではありません。実際には、必要経費を差し引いた収益分に税率をかける計算になります。

国民年金や厚生年金などの公的年金も、雑所得として所得税・住民税の対象となりますが、65歳未満の場合108万円、65歳超の場合158万円を超えた場合のみ対象となり、5%の公的年金控除ができる、などの税制上の優遇措置があります。

中途解約時に元本割れする可能性が高い

個人年金保険は、老後の資金準備を目的とし、長い期間での運用を前提としている金融商品のため、中途解約をすると元本割れするなどのデメリットがあります。

払込期間の長さや期間中の返戻率については商品によって異なりますので、加入する前に条件をよく確認しておきましょう。一般的に、保険料払込中の返戻率が低い商品の方が、保険料は割安で済みます。その分、中途解約時のペナルティが大きくなりますので、個人年金保険に加入する場合には資金に余裕を持って計画する方が良いでしょう。

解約返戻金が払った保険料よりも少なくなる可能性がある

個人年金保険の中には、解約返戻金が総支払込み保険料を下回る商品もあります。変額個人年金で運用成績が想定を下回った場合や、外貨建ての保険で為替が円高に大きく変動した場合などは、中途解約しなくても、元本割れするリスクがあるので注意が必要です。

個人年金保険に加入する際のポイント

個人年金保険に加入すべきか、加入する場合にはどんな商品にすべきかを判断するには、個人年金保険のチェックポイントを知ることが必要です。

個人年金保険に加入する際のポイントをご覧ください。

老後に必要な資金がどれくらいかライフプランを立てる

老後に必要な資金がどれくらいなのか、しっかりとしたライフプランを立てることが大切です。「個人年金保険のメリット」の章で、自分が公的年金をどのくらい受け取るかを確認する方法について触れましたが、これは「収入」サイドの確認です。

しっかりとしたライフプランを立てるには、これに「支出」サイドの計画を加える必要があるのです。

老後の生活での支出は、現役時代とは異なってきます。交際費や服飾費などは減る一方で、医療費などは増加するかもしれません。持ち家か賃貸か、夫婦か単身か、子供も同居するのか、などで必要な生活費は大きく異なってきます。

老後の収入と支出の両方をできるだけ精緻に見積もり、目指すライフスタイルに対してどのくらいの資金が必要なのかを計算しましょう。

受け取れる時期や期間に注意する

老後のライフプランを立てたら、それに対し必要な資金額と必要な時期を考えます。

特に、個人年金保険は長期の運用を前提とした金融商品で、一度入ると中途解約や変更が難しいので、年金の額だけでなく受け取れる時期や期間に注意してください。

60歳で退職する場合、公的年金が受け取れる65歳までのつなぎ資金は大丈夫でしょうか?或いは子供の大学や独立の時期などを考えあわせ世帯の資金計画とマッチしていますか?

自分や家族のライフプランに対し、お金がいつどのくらいまで必要なのか、よく考えてから個人年金保険の加入内容を決めるようにしましょう。

生活費の余剰資金で支払える金額にする

個人年金保険は中途解約すると元本割れするなどのデメリットがあります。

加入当初は大丈夫だと思っていたのに、長期的に支払いが厳しくなり、やむを得ず解約してしまうと思わぬ損をすることも。

個人年金保険に加入する場合には、長期的に支払える保険料なのか、よく検討することが大切です。

個人型確定拠出年金「iDeCo」もおすすめ

老後資金として、公的年金の上乗せの保障を準備したい人には、個人確定拠出年金iDeCoもおすすめです。iDeCoなら、自分の責任で運用商品を選ぶことができ、その上に非課税のメリットなども享受できます。

iDeCoを利用するメリット

iDeCoを利用するメリットには以下のようなものがあります。

  • 掛金が所得控除できる
  • 運用益は非課税

iDeCoは拠出限度額が決まっており、その限度額までの掛金は全て所得控除できる、というメリットがあります。限度額は職業や加入する年金制度などによって異なりますが、国民年金第一号被保険者では月額6.8万円まで拠出することができます。掛金が控除できる上、年金として受け取る際に運用益分は全て非課税になるのも大きなメリットです。

iDeCoを利用する際の注意点

自助努力の個人年金を準備するのに便利なiDeCoですが、利用する際には以下のような点に注意してください。

  • 原則60歳まで引き出し不可
  • 元本割れのリスクがある
  • 口座手数料などのコストかかることがある

iDeCoは、老後資金に備えることを目的としているため、原則60歳まで引き出しができません。また、運用管理機関が選定した金融商品の中から自分で運用商品を選べますが、運用商品次第では元本割れのリスクがあるので注意しましょう。また、商品によっては、口座手数料や還付手数料などのコストがかかることがあります。

個人年金保険に関するFAQ

個人年金保険について、よくある質問をQ&A方式でまとめてみました。

個人年金保険は加入後に見直しができる?

個人年金保険は加入後に見直しができますが、特に早期で中途解約や変更をした場合は、元本割れする可能性が高いです。

損をする場合があり、加入後間もない見直しや変更はおすすめしません。

保険会社や商品によっては、年金の種類や給付の仕方などをペナルティ無しで変更できる場合もありますので、よく確認しましょう。

生命保険会社が倒産しても払った保険料は戻ってくる?

生命保険会社が破綻した場合、通常は「生命保険契約者保護機構」により一定の金額が保護されます。

ただし、保護されるのは「破綻時の責任準備金の90%」です。責任準備金等とは、保険金や年金の支払い原資として保険料から積立てている部分のことを言います。

支払済みの保険料や年金額が全額戻ってくるわけではありませんので注意しましょう。

返戻率の高い個人年金保険はリスクがある?

返戻率が高いもの=リスクがある、というわけではありません。

ただし、返戻率が高いということは、それだけ運用利率が高かったり、積極的な運用をしている可能性が高いということでもあります。

一般的に外貨建て年金や変額個人年金は返戻率が高い傾向にありますが、その分為替変動リスクや運用の結果によっては元本割れのリスクがあることに注意しましょう。

返戻率自体は、保険会社や商品によって異なりますので、よく比較検討してみることが大切です。

まとめ

個人年金保険とは何か、種類や保険料控除などのメリット、元本割れなどのリスクについて、説明しました。

個人年金保険に加入する際には、老後に必要な金額だけでなく、受け取れる期間や長く払い続けられる保険料であるか、などにも注意してください。

老後資金について自助努力が求められる中、老後のライフプランや資金計画をしっかりと立て、色々な金融商品や制度のメリットデメリットを正しく理解して、賢く活用しましょう。

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