公務員の年金は月々いくらもらえる?年金だけで老後資金が十分かも解説
公務員は安定した職のイメージがついていませんが、今と昔では大きく異なります。
比較的安定した公務員だとしても、年金だけでゆとりのある生活を送るのは難しいと言われています。
老後資金について考えるのは、早いに越したことはありません。
公務員がもらえる年金の種類や金額については、ある程度把握しておく必要があります。
目次
公務員がもらえる年金の種類
公務員がもらえる年金には、次の4種類があります。
公務員の場合は年金払い退職給付があるため、受け取れる年金の種類と金額が会社員よりも多くなっています。
老齢基礎年金
老齢基礎年金は、日本の社会保障制度の一部であり、高齢者が年金を受け取るための支給制度です。
日本国内に住んでいる60歳以上の高齢者を対象にしており、一定の条件を満たす場合に受給できます。
例えば、保険料を納めた期間が10年以上の場合、老齢基礎年金を受け取ることができます。
支給額は20歳から60歳まで480月(40年)の全期間保険料を納付した場合、満額で777,800円(年額)です。
老齢基礎年金は高齢者の生活を支えるための重要な制度で、日本の社会保障制度の一環として運用されています。
老齢厚生年金
老齢厚生年金は、60歳〜満了年齢(現在は65歳)までの高齢者を対象にしている制度です。
厚生年金保険に加入していた方が受け取れる保険で、厚生年金保険に加入していた時の報酬額や加入期間などに応じて受給できる年金額が異なります。
原則、65歳から受け取ることが可能で、老齢基礎年金と同じく繰り上げ受給や繰り下げ受給も可能です。
退職等年金給付(年金払い退職給付)
退職等年金給付(年金払い退職給付)は、将来の年金給付に必要な原資を、あらかじめ保険料で積み立てる給付です。
年金の給付額を国債利回り等により変動させることで、保険料の追加拠出リスクを抑制する効果もあります。
組合員が毎月の保険料を積み立てることにより、毎月の報酬に付与率を加算した額が積み立てられます。
この積み立ては、65歳から受け取れますが、支給開始年齢を60歳、または70歳に繰り上げ・繰り下げることも可能です。
経過的職域加算額
経過的職域加算額とは、従来の共済年金のうちの3階部分が廃止されたことに伴い、組合員に対して経過措置として設けられている制度です。
平成27年10月1日に施行された、被用者年金一元化法により廃止された公務員共済制度独自の職域年金相当部分を保障するもので、公務員のみが該当する年金でもあります。
経過的職域加算額は以下のように、職域年金相当部分と同様に計算されます。
(平成15年3月31日までの期間)「平均給料月額 × 1.425/ 1,000× 平成15年3月までの組合員期間の月数」
(平成15年4月1日から平成27年9月30日までの期間)平均給与月額 × 1.096/ 1,000 ×平成15年4月~平成27年9月の組合員期間の月数
公務員がもらえる年金額は月々いくら?
それでは、公務員がもらえる年金額はいくらなのでしょうか?
老齢厚生年金(老齢基礎年金含む)・退職等年金給付・経過的職域加算額の月支給額を表にまとめましたので、参考にしてください。
月支給額 | |
老齢厚生年金(老齢基礎年金含む) | 平均月額14万5,665円 |
退職等年金給付 | 平均月額40.6万円 |
経過的職域加算額 | 平均給与月額 × 1.096/ 1,000 |
厚生年金(基礎年金含む)の支給額
厚生年金(基礎年金含む)の支給額は、平均月額14万5,665円です。基本月額は、老齢厚生年金(年額)を12で割った額です。
令和3年度末における厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給する老齢基礎年金の額を含めて、老齢年金が14 万6千円、通算老齢年金が6万63千円となっています。
厚生年金(基礎年金含む)の支給額は年々0.5%〜2.0%ほど増加している理由は、受給者が前年と比べて増加していることが一つの要因として考えられます。
退職等年金給付(年金払い退職給付)の支給額
退職等年金給付(年金払い退職給付)の支給額は、平均月額40.6万円です。
退職等年金給付(年金払い退職給付)は前提条件によっても異なりますので、以下のモデルを参考に実際に計算してみましょう。
- 平均標準報酬月額:
- 組合員期間:40年加入(20歳~60歳)
- 支給開始年齢:65歳
- 有期年金の受給期間:20年を選択
- 付与率:1.50%
- 基準利率:0.48%
【給付算定基礎額(65歳時点)】4,206,940円
【年金月額(20年受給)】17,299円
基準利率は10年国債の応募者利回りを基礎として設定し、毎年10月に見直しが行われます。そのため、モデル金額の金額も違ってくるので、注意してください。
経過的職域加算額の支給額
経過的職域加算額の支給額は、「平均給与月額 × 1.096/ 1,000」に当てはめて計算します。また、本来の水準額と従前の保障額では、金額の高い方が支給される仕組みです。
【本来水準額】
- 平成15年3月以前 平均給料月額×1.425×平成15年3月以前の 旧地共済期間の月数 1,000
- 平成15年4月以後 平均給与月額×1.096×平成15年4月以後の 旧地共済期間の月数 1,000
上記2つの合計額
【従前保障額】
- 平成15年3月以前 平均給料月額×1.5×平成15年3月以前の旧地共済期間の月数×1.014
- 平成15年4月以後 平均給与月額×1.154×平成15年4月以後 旧地共済期間の月数×1.014
繰り上げ受給すると年金額は減少する
老齢基礎年金などを支給する場合、繰り上げする期間に応じて年金額が減少してしまいます。繰り上げ請求をすると、請求した日の翌日分から年金が支給されます。
繰り上げ受給をすると65歳になる前から年金がもらえるようになりますが、受給開始の時期を早めると年金支給額は減少してしまうので、注意が必要です。
受給額を早めた月数に応じて、1ヶ月あたり約0.4%ずつ減額されてしまいます。なお、老齢基礎年金を繰り上げ受給した場合、後に繰り上げ受給の申請を取消することはできませんので、注意してください。
公務員は年金だけで老後を過ごせる?
公務員は年金だけで老後を過ごせるかといえば、年金だけでは足りない可能性が高いです。
老後資金として必要な金額
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年度)」によると、夫婦2人で老後生活を送るうえで必要となる資金は月額で平均22.1万円とされています。
夫婦2人世帯の場青 | 単身世帯の場合 | |
---|---|---|
食費 | 67,776円 | 37,485円 |
住居 | 15,578円 | 12,746円 |
光熱・水道 | 22,611円 | 14,704円 |
家具・家事用品 | 10,371円 | 5,956円 |
衣類 | 5,003円 | 3,150円 |
保健医療 | 15,681円 | 8,128円 |
交通・通信 | 28,878円 | 14,625円 |
教養娯楽 | 21,365円 | 14,473円 |
その他 | 49,430円 | 31,872円 |
総支出合計 | 268,508円 | 155,495円 |
必要な生活費は家族構成や居住地によっても大きく左右されますが、老後に年金だけで生活することは難しいです。老後にゆとりのある生活をしたいなら、月額平均36万円ほどは必要になります。
そのため、年金以外にも必要に応じて老後の資金について、今のうちに準備しておく必要があります。
老後資金を貯めるのにおすすめの方法
老後資金を貯めるのにおすすめの方法は、以下の5つです。
- NISA・つみたてNISA
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 投資信託
- 不動産投資
- 太陽光投資
ゆとりのある老後生活を送るためにも、早い段階から準備しておく必要があります。自分に向いている資産運用について理解を深めておきましょう!
NISA・つみたてNISA
NISA・つみたてNISAは、節税しながら効率良く資産運用ができる制度です。少額(100円)からの利用が可能で、つみたてNISAの場合は20年間の運用益と分配益が非課税となります。
通常投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAなら本来差し引かれるはずの税金も、20年間引かれません。
また、ドル・コスト平均法で平均買付単価を抑えられるから、初心者でも安定した利益に期待ができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。加入は任意で、申込や掛金の拠出、運用などは全て自身で行います。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は65歳になるまで拠出可能で、60歳以降ならいつでも老年給付金を受け取れます。
商品ラインナップは運営管理機関が厳選し、本数も限られているため通常の運用と比べても選びやすくなっているのが特徴です。
投資信託
投資信託は老後資金の運用方法におすすめですが、あくまでも投資なので元本割れのリスクがあります。ただ預貯金や債券よりも、資産が増える可能性があります。
また、運用については自分の代わりにプロが行ってくれるので、安心して運用できます。預貯金に預けているよりも平均利回りが高く、投資初心者でも気軽に始められる投資方法です。
不動産投資
不動産投資も老後資金のための投資におすすめです。不動産投資の最大のメリットは、ローン完済後も家賃収入が期待できます。
長期的に家賃収入が見込めるので、年金がなくても場合によっては家賃収入のみで生活することも可能です。
もちろん、リスクが高い投資方法でもありますが、団体信用生命保険に加入して、自分に万が一のことがあっても家族に迷惑をかけずに済む方法もあります。
太陽光投資
太陽光投資は、個人投資家でも参入しやすいハードルの低さと、国の制度による安定した収益性の高さが魅力の投資方法です。太陽光投資は平均利回り10%と他の投資と比べてもかなり高利回りの商品です。
固定価格買取制度があり20年間は同じ価格で電気を買い取ってもらうことができるので、返済の目処が立ちやすい点も魅力です。
公務員の年金に関するQ&A
公務員の年金に関する疑問を解決していきましょう。
公務員はiDeCoに加入したほうがいい?
公務員はiDeCoの掛け金が全額所得控除の対象です。公務員が毎月上限の12,000円を積み立てた場合、年間積立額の144,000円が所得控除となります。
iDeCoは節税効果が高く、非課税で運用ができるので、年金だけで補えない分を効率的に老後の資金を貯められます。
公務員の年金と退職金で老後は安心?
地方公務員の退職金は平均1,530万円で、60歳で定年退職した場合には平均2,190万円の退職金がもらえます。
公務員の年金は月々16万円なので、結論から言えば退職金と年金だけでは、豊かな老後は過ごせません。ゆとりある暮らしをする場合は、月々夫婦二人で36万円は必要になるため、公務員であっても現役の時から年金と退職金に依存しないよう、資産運用も検討することをおすすめします。
公務員の妻は年金をもらえる?
公務員の夫と専業主婦の夫婦で、給与が平均年収の場合は、約7万円程度の金額の年金を受け取れます。
夫婦合わせて月々25万円を受け取れる計算になりますが、老後にゆとりある生活を送りたい場合は、平均36万円が必要になるため、夫婦合わせて25万円では足りないことが想定されます。
足りない約10万円をどう確保するかが、重要です。早いうちからiDeCoやNISA、不動産投資などを検討しておくと安心です。
公務員の年金は何歳からもらえる?
現時点では公務員の定年は60歳ですが、年金は65歳から受け取れます。そのため60歳からの5年間は収入が途絶えてしまうため、貯金などで年金受給まで暮らす必要があります。
ただ2025年から定年制度を導入しているすべての会社で、65歳定年制が導入されるため、年金をもらえる65歳までは働き続け給与を受け取れるようになります。
公務員ができるおすすめの資産運用は?
公務員におすすめの資産運用は、つみたてNISAやiDeCoです。
つみたてNISAは年間40万円までなら、最長20年間非課税で運用できる制度です。運用益が非課税になるので、節税効果も期待できます。
iDeCoも同じく節税効果が高いので、公務員が年金だけでは不安な老後の資金を貯めるのにおすすめです。
まとめ
公務員は安定した職業ということもあり、老後の比較的安定した生活を送りやすいです。
ですが、年金制度や支給額は今と昔で大きく異なります。今は誰でも一律の年金を受け取れるわけではなく、受給額は人それぞれです。
しかも、物価上昇なども影響して年金だけでゆとりのある生活を送るのは難しくなっています。退職金を合わせたとしても安定した老後を送れるかどうかは分かりません。
自分と家族の老後のためにも、今のうちに老後資金について考えておく必要があります。